『アシュトンマニュアル』困難といわれるベンゾジアゼピン剤からの離脱

今後の日本の課題

女性の社会進出が取り沙汰されています。

企業だけではなく、国も女性の活躍を期待していることは間違いなく、これからの日本の課題である少子高齢化や労働力の減少、社会保障費の増大などの問題もあり、今後益々この傾向が顕著になっていくと思われます。

「女性も働ける人は頑張って働いてくださいね」って事のようです。

働く女性

心を病んでしまう要因

イギリスの哲学者、バートランド・ラッセルは「世界中の人がそれぞれ自分のしたい仕事を1日4時間すれば、全世界が平等で平和に暮らしていけるはずだ」と主張しています。

ところが、現実世界に目を向けると1日4時間どころか、14時間働いてストレスや疲労から体調を崩してしまう人、逆に働きたくても才能を発揮できる場を見つけることが出来ずに苦しんでいる人が大勢います。

厚生労働省の調査によると近年、うつ病や統合失調症、不安障害など心の病を抱える人が200万人を超え、どこの心療内科も予約が取れない、という話を耳にします。

精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)

心を病んでしまう要因は人それぞれ様々ですが、米・精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」による、うつ病の診断基準は

  1. 抑うつ気分
  2. 興味や喜びの喪失
  3. 食欲又は体重の顕著な減少又は増加
  4. 不眠又は過眠
  5. 精神運動性焦燥又は静止
  6. 疲労又は気力の喪失
  7. 無価値感又は過度の罪責感
  8. 思考力又は集中力の減退
  9. 死への願望、死に関する考え

などの症状のうち、少なくとも5つが2週間以上続く状態をうつ病といいます。

心の風邪

うつは「心の風邪」?

誰でも罹りうる、という意味でうつを「心の風邪」に例えたりするようですが、実際、うつは風邪などとは比較にならない程つらく、日常生活への影響も深刻です。

精神科だけでなく心療内科でも受診しやすくなったことで出来たフレーズなのでしょうが、違和感を感じます。

人は危険や強いストレスに晒されると、身体はそれを克服するために興奮物質であるアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミン、グルタミン酸などを分泌します。

しかし、これらが必要な量を超えて分泌されると暴走し、ニューロンなどの神経細胞を傷つけてしまいます。

神経伝達物質「GABA」

そこで、今度は出すぎた興奮物質にブレーキをかける必要から、抑制系の神経伝達物質であるGABAが働きだします。

これはアミノ酸の一種で脳内安定剤とも呼ばれています。

GABAは興奮状態が解消されれば当然必要なくなるわけで、時々の興奮に応じて必要な量が分泌されるという絶妙な働きをしています。

問題はGABAの分泌量には限りがあること。

ある人が今まで経験したことがない様な強いストレスに晒され、ストレスから来る興奮物質(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、グルタミン酸)が出すぎた時にそれを抑えるのに十分なほどのGABAが分泌できない事態に陥ったとき、抗うつ剤や睡眠剤、安定剤として広く使われるベンゾジアゼピン剤が使われます。

副作用について

イメージ

十分注意が必要な薬「ベンゾジアゼピン剤」

ベンゾジアゼピン剤は様々な適応症に処方されてきました。

GABAの代わりになる物質として不足している自前のGABAを補い、強すぎる不安から社会生活をおくるのが困難な人が一時的にその状態から逃れることができます。

これは大きな利点です。

反面、少し量を多く摂ると眠くなる作用もあり(これが睡眠剤として使われる理由ですが)、眠くなるまでの間、逆に興奮したり異常な言動を繰り返したりすることもあります。

脳内の神経系の働きは複雑な上、十分に解明されたとは言えず、「ベンゾジアゼピン剤を使えばすべてが解決する」というような単純な話ではないのです。

ベンゾジアゼピン剤を長く使うと医学用語で云うダウンレギュレーション(下方制御)、つまり慢性的に身体が薬剤の刺激を受け続けることを避けるため、その受容体を減らして刺激を減らそうとする現象がおこります。

結果、薬剤の効きが段々と鈍くなり(耐性が出来て)、効きが鈍いために更に多くのベンゾジアゼピン剤が必要になり用量が増えていくのです。

アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ベンゾジアゼピンの長期使用を承認していません。

ヘザー・アシュトン女史『アシュトンマニュアル』

とても困難といわれるベンゾジアゼピン剤からの離脱を高確率(90%以上)で達成している手引書があります。

英国・ニューカッスル大学神経科学研究所のヘザー・アシュトン教授によるベンゾジアゼピンの作用、副作用、離脱症状、
減薬法などをまとめた”アシュトンマニュアル”と呼ばれるものです。

アシュトンマニュアルにはいくつかのポイントがありますが、まず冒頭にアシュトン教授からのメッセージとして序文の中で注意喚起を行っています。

その中で「患者個人の必要性にしたがって、医師ではなく患者自身が減薬速度をコントロールしてください」という部分が重要です。

自らの身体にもっと責任を持って注意深く観察する必要があります。

アシュトン教授からの大切なメッセージ 2007年1月

  1. このマニュアル内で示された離脱スケジュールは単に“一般的な指針”を示すために作成されたものであることを、あなたの処方医に伝えることが大切です。減薬速度は決して厳格になってはいけません。柔軟であってください。そして、患者個人の必要性にしたがって、医師ではなく患者自身が減薬速度をコントロールしてください。それぞれの必要性はあらゆるケースで異なってきます。離脱を決断するのも患者自身であり、医師に強制されてはいけません
  1. お酒(アルコール)はベンゾジアゼピンと同じように作用するため、仮にも飲酒するような場合は、このマニュアルで推奨されたように厳しく節度をもって飲まなければいけないことに注意してください。
  1. 何らかの理由で抗生物質は、時に離脱症状を悪化させることがあるようです。しかしながら、抗菌剤の一種であるキノロン剤は、実際にベンゾジアゼピンをGABA受容体の結合部位から外します。これらはベンゾジアゼピンを使用中あるいは減薬中の人に、激しい離脱を引き起こす可能性があります。ベンゾジアゼピン離脱中に抗生物質を摂取する必要があるかもしれませんが、可能ならキノロン剤は避けるべきです(少なくとも6種の異なるキノロン剤があります。疑問がある時は主治医に問い合わせてください)。

C. H. アシュトン 2007年1月

興味のある方、詳しい内容を知りたい方はこちらをご覧ください。

アシュトンマニュアル・日本語改訂版PDF・2002年8月改訂版

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