文明が生み出した病~「世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease:GBD)」が明らかにしたこと

「文明病」という言葉は、現代人の健康に関する重要な問題を示唆しています。

「文明病」という概念が生まれたのは「進化」の概念と同じく約200年前の事ですが、ナポレオンに仕えたフランス人医師のスタニスラ・タンシューが行った講演にその考え方が現れています。

タンシューは当時の死亡記録を分析して、フランスの田舎町に比べてパリの様な都市部で癌が多く発生している事に気付きます。彼が凡庸な医師ではなかった事が窺えます。

不安

原始の頃、人に虫歯と癌は見られなかった

20世紀を迎える頃には、文明病という考え方は世界中に広まっていました。

最初に文明病として認識されていたのは癌や虫歯のカリエス(原始人にはこの二つの病気がほとんど見られませんでした)のような疾病ですが、現在では物質文明の発達に伴って生み出される様々な病気や精神障害など全般を指す言葉になっています。

いわゆる「辺境の地」に暮らし、文明の波に晒されていない世界中の様々な民族、イヌイット、アリュート族、北米のアパッチ、オーストラリアのアボリジニなどを対象にして現地に赴き、研究を重ねた多くの冒険的な医師たちによって、彼らの健康状態に関する調査報告がなされ、先住民には見られない病気がリストアップされました。

地域に関係なく先住民には、癌、高血圧、2型糖尿病、関節炎、乾癬、心血管疾患、虫歯など、現代人を苦しめるこれらの疾患が皆無か、もしくは非常に少ないことがわかりました。

もっとも、欧米式のライフスタイルを受け入れたかつての先住民たちには、現代人と同じような疾患が表れているのですが。

「世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease:GBD)」

ワシントン大学の保険指標・評価研究所(IHME)を事務局として2007年に始まり、東京大学大学院医学系研究科や世界保健機関(WHO)他7つの機関の共同研究として進めている「世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease:GBD)」は、世界187カ国における国や地域で、何が私たちを病気にし、生活の質を損なわせているのかという事を包括的に調べる過去最大規模の健康調査です。

1990年に始まり、現在まで300種類以上の疾患、怪我、危険因子を調べ上げ、その結果を必要に応じて更新、公表しています。

注目すべきなのは、世界の疾病負担の半分以上が、そのうちわずか18種類の少数の疾患が原因なっているという調査報告です。

文明

文明病のリストとその危険因子

主なものをいくつか取り出してみます。

HIV(ヒト免疫不全ウィルス)、腰痛、下痢、マラリア、虚血性心疾患、下気道感染症、脳卒中、早産、慢性閉塞性肺疾患、交通事故による障害、うつ病性障害、新生児脳炎などがあります。

もしかしたら新生児脳炎は貧困との関連が皆無ではないかもしれませんが、マラリアは明らかに文明病であり、その流行は農業のための森林伐採に起因しています。

そして同調査はこれらの問題の原因と思われる12の危険因子として

喫煙、アルコール、高血圧、空気汚染、果物不足、肥満、高血糖、低体重、大気汚染(粒子状物質)、運動不足、塩分の摂り過ぎ、種実類(ナッツ)の不足を挙げています。

これらが意味するもの

このリストは私たちが持つ先入観を見事に裏切ります。

通常、私たちが「病気」と呼ぶものは、細菌やウィルスによって引き起こされる感染症、または何らかの遺伝的欠陥によって引き起こされるものだと考えています。

ところがリストを見ると、それらは人体の設計上のミスや傷ではなく、私たちの生活習慣や食習慣によって自ら招いた損傷が大方の病気を引き起こしていることに気付かせてくれるのです。

理想的な食生活とは
生活習慣病を予防するために避けて通れないこと
加工食品だらけの食生活

それは「病気」というよりも「文明の苦しみ」と呼ぶほうが正しいのかも知れません。

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