「ナン・スタディ」 認知症を克服したある修道女の物語Part 1

ナン・スタディ

認知症関連の研究や書籍でよく引用される研究例に「ナン・スタディ」があります。

700人近い高齢の修道女が協力・参加した大規模なものです。

米ミネソタ大学(当初はケンタッキー大学)の予防医学研究グループが、ノートルダム修道院の協力を得て行っていて、1986年から始まり現在でも調査・分析が継続されている息の長いもので、これまでに認知症に関する様々な知見をもたらしています。

その中でもかなり興味深い事例をご紹介します。

ナンスタディー

101歳の修道女 シスター・マリー

ナン・スタディの協力者の1人に101歳で亡くなったシスター・マリーという方がいました。

シスター・マリーは亡くなる直前まで知能テストで高得点を獲得し続け、修道院の毎日の日課などもきちんとこなし、他の修道女とのコミュニケーションも問題なく取れていました。

つまり、認知症とみられる症状は微塵もなかった、ということです。

ところが、彼女の死亡後に行われた病理解剖で彼女の脳は何年も前から萎縮していたことが明らかになった上、脳組織には老人斑や神経原線維変化が多数見つかりました。

彼女の脳がアルツハイマー病を発症していたことは疑う余地がありませんでした。

なぜ、認知症の症状が出なかったか

「では、なぜ?」と研究者たちは疑問に思いました。

アルツハイマー病に罹っていることは疑いようも無く、脳の萎縮もかなり進んでいたにも関わらず、なぜ認知症の症状などまったく見せないままシスター・マリーは亡くなったのか?

その疑問を探るためには、彼女の人生を少し振り返ってみましょう。

彼女たち修道女の暮らしは慎ましく、祈りと奉仕活動を基本とした規則正しいものです。

シスター・マリーは中学卒業と同時に修道院で勉学を修め、その後長い間教育機関で教鞭をとり、引退後も修道院内で知的活動に取り組みました。

彼女の人生は、絶えず活発な脳内神経活動があったことが分かります。

この事例は、たとえ老化などの避けられない要因によってアルツハイマー病を発症しても、それまでに脳内の神経細胞を活発に使って、そしておそらく規則正しく健全な生活を守っていれば、認知症の症状が出てこないこともある、という驚くべき事実を示唆しています。

脳細胞を活性化する

この報告があるまでは、研究者の間でも脳がアルツハイマー化すれば、認知症になってしまうのは避けられないことだと考えられていましたから、まさに今までの常識を覆すものでした。

歳をとっても好奇心を絶やさず、新しい知識を積極的に吸収し、取り入れた情報を分析・診断して過去の経験や知識と照らし合わせて吟味する、といった一連の思考を何度も何度も繰り返すことが脳細胞の活性化につながります。

鍵は認知的予備力

すると、脳の中で活発に働く神経細胞の数は全体として増えていきます。

そうして活性化され、記憶容量が増えた脳は機能維持に必要な余力を持つことが出来ます。

こうした余力のことを「認知的予備力」と呼びます。知識の蓄えのことだと思ってください。

アルツハイマー病などで脳細胞が大きくダメージを受けた時、この認知的予備力をたくさん持っている人の場合、実際に認知症の症状が発症するまで相当時間的猶予があるのではないか?!

長く鍛えられた脳は認知機能が低下しても認知障害に陥らない程度に機能を維持できるのではないか?!

これが、アルツハイマーの研究者たちが出した仮説です。

 「ナン・スタディ」Part2に続く

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