精神の健康に瞑想が果たす役割

コルチゾール濃度でわかること

『ストレスが神経に及ぼす影響』の研究などで知られるストレスの権威、神経内分秘学者のロバート・M・サポルスキー博士は野生のヒヒを使った実験で有名になりました。

ヒヒの血中のコルチゾール濃度を比較・分析する事で野生動物の生活にもストレスがある事を証明したのです。

自然

コルチゾールはストレスの強さによって分秘される量が変化する副腎皮質ホルモンの一種ですが、ヒヒの集団の階層関係によるコルチゾール分布を調べると、あることが分かりました。

ストレスは支配とその行使の仕方に関係があるということです。

下位のヒヒ達は四六時中アルファ・オス(ボス)から暴力と嫌がらせを受けることで強いストレスを感じています。

自らの支配を維持するためにアルファ・オスもストレスを感じていますが、これは支配される側のヒヒ達とはまた違った形のストレスです。

ヒヒ達のストレスの主因は食料が足りないとか捕食者に対するものではなく、社会的階層、つまり『格差』によるものだったのです。

ある時、群れに伝染病が拡がり(サポルスキーによると人間の残飯を食べたのが原因で)優位なオスが死に絶えた後、生き残ったヒヒ達には平和が広がりました。格差が消えた事によりストレスも著しく改善されたのです。

優先的に餌にありつけるというアルファオスとしての特権が仇になった格好です。

ストレスと支配の関係

ヒヒの社会も私たちとほぼ同じ理由でストレスを感じていることがわかります。

自らの状況を支配できないことに対するストレスです。

しかし、ストレスと支配の関係はそれほど単純ではなく、サポルスキー教授によるとストレスは1~2時間の短い時間なら脳に素晴らしい効果をもたらすといいます。

「ストレスを感じるとより多くの酸素とブドウ糖が脳に運ばれるようになります。実のところ記憶を司る海馬は、短期間ストレスを受けている時の方が良く機能することがわかっています。

また、ストレスを受け始めると脳はドーパミンを放出します。それには快感をもたらす働きがあり、そのせいで気分が良くなり、脳も良く働くようになるのです。」

彼がこれを証明するために行った実験は、やはりサルを使ったものでサルがレバーを押すと報酬を与えドーパミンの放出量を調べるというシンプルなものでした。

レバーを押すたびに与える場合と2回に1回の割合でランダムに与える場合とを比較したところ後者のほうがドーパミンの放出量が多いことが分かりました。

ドーパミンは脳の報酬系に関与する神経伝達物質ですが、気分を良くし、精神の集中を助けます。

自ら状況を支配できないことはストレスに繋がるはずでしたが、この実験ではサルはむしろ支配できない状況を喜んでいます。両者の違いは何でしょう?

支配できない事柄は悪意を感じる状況では強烈なストレスになっても、安全で快適な環境ではむしろ喜びに繋がるということです。

瞑想が果たす役割

「幸福な生活とはストレスのない生活ではない」とサポルスキー教授は述べ、それを理解すれば瞑想との繋がりが見えてくるといいます。

ここで瞑想を持ち出すことは、やや唐突に思われるかもしれませんが統合失調症や双極性障害、抑うつ、自閉症などの精神の健康にたいする研究が進むにつれ、瞑想という心理学や現代医学が真面目に取り合おうとしなかった高次の精神活動に対する関心が高まっています。

瞑想

これまでのEEG(脳電図)を使った計測では脳の表面にあらわれた活動しか捉えることが出来ませんでしたが、fMRI(磁気共鳴機能画像法)などの神経科学の最新機器がより詳細な多くの情報をもたらすようになったことも大いに研究を後押しすることになりました。

例えば無作為に抽出した被験者に短期間で瞑想を教え、fMRIでその後の変化を調べたところ脳の活性化や不安、うつの減少が見られたほか、瞑想者グループとその対象グループにインフルエンザワクチンを接種したところ瞑想グループの被験者には瞑想初心者にもかかわらず、良好な免疫反応がみられました。

乾癬を患っていた瞑想グループのある被験者には症状の改善もみられました。

この実験結果が信じられなかったウィスコンシン大学の神経生物学者リチャード・デビッドソン教授は同じ実験を2回行いましたが、瞑想者の治癒率は対象群のおよそ4倍にもなりました。

瞑想は様々な文化で長年にわたって行われてきました。バリエーションも豊富になり数多の技術が開発されていますが、一般的な方法はただ静かに座り心に浮かぶ思考や事象をあるがままに観察して心に留める方法。

もう1つはあるひとつの言葉(祈り・聖句)や感覚や呼吸に意識を集中させるやり方です。

一般に瞑想とは休息や至福体験、若しくはそれに近いものだと考えられていますが、彼はこの考え方を否定します。

最近行われたある研究では瞑想と脳容量の増加に関連があることがわかりました。他にも学習、記憶、感情の制御に関わる領域の増加も認められ、海馬に至っては量だけではなく形まで変化しました。

ただ心を鎮めて瞑想するだけでストレスの改善に効果があるの?その答えはどうやら”イエス”のようです。

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