人体は微生物の棲家

私たちは自分自身で思っているほど清潔なわけではありません。

たとえば口内を見てみましょう。真菌や細菌など無数の生命体がひしめいています。皮膚にも細菌がうようよしており、内臓にも細菌が満ち溢れています

人体は微生物の棲家といえます。

体内細胞の大多数は微生物から作られていますが、そう見えないのは人の細胞が微生物の細胞より大きいからにほかなりません。

そして、1人の人間の中には地球上に住む人間よりも多くの微生物が住んでいます。

私たち1人ひとりが6兆を超える生物の命の源であり、その生命を文字通り養っています。

これらの微生物の中には人間の健康維持に欠かせない有益な生物もいれば、逆にとても危険な生物もいます。

宿主の死は自らの終わりを意味する

微生物から逃れようなどと考えてはいけません。これらの微生物は私たちから得るものと同じくらい多くの物を与えてくれています。

食べ物の消化を助け、免疫系を調整し、病気を追い払ってくれます。宿主に害(しかも壊滅的な!)を与える微生物は無能な微生物です。宿主の死は自らの終末を意味するからです。

ほとんどの微生物は、私たちが生を享けてから老いるまで身体を共有し、何の害悪も与えず。たとえ与えたとしてもほんのわずか、というものがほとんどです。

小宇宙

人体は見事に防御された城砦

ドイツの細菌学者パウル・エールリヒは、化学療法や免疫学の基礎を築いた独創的な研究者であり、その功績によって1908年にノーベル生理・医学賞を受けました。

彼の業績で明らかになったのは、健康な人体といえども、何の不都合もなく調和の取れた穏やかな状態にあるわけではなく、絶えず包囲攻撃にさらされながらも、みごとに防御されている城砦のようなものだ、ということです。

20世紀半ばに発見されたペニシリンと抗生物質誘導体のおかげで人間は細菌よりも優位に立ちました。

これで人間の圧倒的勝利を誰もが確信したのです。

現に何千万という人が死を免れました。

ところが、やがて様々な細菌が強力な抗生物質にさえ、耐性を示すようになってきました。

WHOが警告!多剤耐性菌の恐怖

人類が唯一撲滅できた感染症は天然痘です。

これはウィルスによる感染症です。天然痘は恐ろしい病気には違いありませんが、撲滅しやすい病気でした。

天然痘ウィルスには野生動物の自然宿主がいなかったため、その中で変異を繰り返すことがありません。加えて、インフルエンザのように速いペースで変異する習性を持っていなかったこと。つまり停まっている敵を狙い撃ちに出来た、ということです。

微生物の進化型は宿主との共生

無能な微生物は宿主を殺しますが、賢い微生物は宿主と共生します。

寄生生物の中には成熟すると(つまり、用が済むと)結果的に宿主を殺してしまうようなものもいますが、ウィルスにしろ細菌にしろ伝播力を失うことなく毒性を緩和していくのが自身にも利する筈です。

完璧に適応したウィルスなら宿主に何の損傷も与えることなく増殖できますし、げんにそうしています。

微生物はそれこそ何百万年もかけて宿主の細胞構造や免疫システムを調べ上げ、自分たちが増殖しやすい生態的地位(ニッチ)を築いて子孫を残そうとしているのです。

そして当然それなりの仕事、宿主に結果として利する仕事もしてくれているわけです。

私たちと微生物の関係は双方に有利な共生関係に向かって進化している、と考える科学者もいます。

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