プラシーボ(偽薬)効果とは実体のある身体のメカニズムである

ストレスや不安のような不快な心の状態が、ひいては健康を損なう大きな原因の一つである事は、今でこそ一般的に認められた事実ですが、ひと昔前までは激しい論争の的でした。

信じられますか?心の状態が身体へ影響を及ぼすという事実がある人たちにとっては絵空事と捉えられていたのです。

大切な事

従来の医療や科学は、あまりにも身体に対する心の影響を軽視しています。測定可能な数値にばかり集中しすぎて心が持つ実体のない効果を信じられないのです。

車を運転中、突然飛び出してきた子供にびっくりして急ブレーキを踏んだ時、アドレナリンが急上昇するのを感じます。大きな仕事を成し遂げた時、心が高揚するのを感じ、ごみ箱の生ごみに沸いたウジ虫をみた時、吐き気を催します。

これらはすべて心の働きが身体に強く影響を及ぼす体験です。

プラシーボ効果

『奇跡的治癒とはなにかー外科医が学んだ生還者たちの難病克服の秘訣(日本教文社)』の著者、バーニー・シーゲル博士は病気の受け止め方と治癒の間の直接的な繋がりについて指摘しています。医師から診断を受けた患者に生じる感情的トラウマについても・・。

「残念なことに、医師は患者とのコミュニケーションの方法を教わりませんので、医師の言葉、そして患者が読むようにと渡される言葉はネガティブな作用を及ぼしてしまいます。権威者から発せられる言葉は、まるで催眠術のような影響力があります。

~略~

言葉は剣よりも強しです。そう、言葉はまるで手術用メスのように患者を殺すことも治すこともできる剣になるのです。」

医師はこの厄介な問題ー”なにが疾病の原因なのか?”という問いに答えられずにいます。

医学の世界でプラシーボ効果(偽薬効果)ともプラセボ効果とも呼ばれるものがあります。

偽の治療や投薬を受けた患者がその後、回復したように見える現象のことで、医学の世界ではよく知られていますが、プラシーボがどのように作用するかを理解している医師はほんの一握りです。

偽薬はプラシーボ効果を期待して行われる場合と新薬などの治療効果を確かめるための比較対象試験として行われる場合とがあります。

前者の場合、患者が偽薬(実際には乳糖や生理的食塩水など)を有効な薬だと信じ込むことによって何らかの改善がみられます。

臨床試験では高血圧や胃腸障害、悪阻、喘息にいたる幅広い条件下で一貫して強いプラシーボ効果が確認されています。効果の高い治療を受けたと信じるだけで症状が緩和され、いくつかの症例では完全に症状が消失したのです。

誤解そして偏見

世界で最も評価の高い5大医学雑誌のひとつ『ランセット』も少し時代を遡ると、「プラシーボは無知、或いは無力な患者のエゴをなだめる」というような記事を載せていました。これほど露骨でないにせよ、今も偽薬を処方する事に対する倫理的な批判もあり、プラシーボに懐疑的な医師たちは一定数います。

プラシーボが倫理に反するかどうかは議論の余地がありますが、プラシーボ対象試験のおかげでどの薬が効き、どの薬が効かないかを科学的に判断できるようになった功績は大きく、たとえ有望な治療でもプラシーボより良い結果を出さなければお蔵入りとなります。

ワシントン大学のジェリー・ジャービック医師とミネソタ州メイヨークリニックのデビット・カルメス医師はチームを組み、革新的な実験をしました。圧迫骨折によりつぶれた椎骨をセメントで整復する椎体形成術という外科手術があります。 除痛効果が高いとされているこの治療を実際に施す患者と、患者に知らせることなく偽の手術を受けさせた二つのグループを比べ、椎体形成術の有効性を試験するというものです。

通常、外科手術にプラシーボ対象試験を行うことはありません。倫理上問題があると判断されているからですが、カルメス、ジャービック両医師に言わせれば、外科手術において検証されていない治療を行う事こそ非倫理的であり、数百万人の患者を傷つけてしまうかも知れないと主張しています。

彼らは世界中の11の病院で脊椎骨折患者131名の登録を行い、その半数が椎体形成術を受け、半数が偽の手術を受けました。患者全員が一か月間追跡調査されましたが、椎体形成術と偽手術の間に有意差はなく、どちらの群も著しく改善していました。

プラシーボは実体のある身体のメカニズムである

また、ある医師は口腔外科手術を受けた患者に偽薬を投与しました。すると1/3の患者が偽薬投与後に著しく痛みが緩和されたと言いました。その後、医師は患者に伝えることなくエンドルフィンの効果を阻害する薬であるナロキソンを投与しました。

すると患者の痛みがぶり返しました。ここから分かるのは偽薬を投与されて痛みが消えたと感じても、それは思い込みでも期待が生んだ幻想でもなく、あらゆる薬の効果と同様、実体のある身体のメカニズムである、ということです。

プラシーボ研究のパイオニアである神経科学者のファブリッツィオ・ベネディッティはこれらの患者の脳内で何が起こっているのかを詳しく調べ上げました。

彼が最初に取り組んだのは痛みの緩和メカニズムです。オピオイド剤の代わりにプラシーボ鎮痛剤を投与すると痛みが緩和されるだけではなく、アヘン剤のように呼吸数、心拍数が低下することも分かりました。

さらに、強力な鎮痛剤だと考えられているいくつかの薬には、痛みに対する直接的な効果が全く無い事も明らかにしました。信じがたいことに強力な鎮痛剤だと思っていた薬が作用するのは、これで痛みが和らぐという期待が引き起こす脳内の天然エンドルフィン放出でした。

つまり、プラシーボ効果であり、その証拠に”薬が投与された”と知らなければ役に立たないということなのです。

もうすぐ病気がよくなると信じること

こんな疑問がわいてこないでしょうか?プラシーボ効果は無知な幻想ではなく、実際に臨床価値を持つ場合もあるのではないか?そして、もしそうなら多くの潜在的な危険をはらむ治療に患者をさらすより、これを採用する方が患者にとってのメリットが大きいのではないのか?

「もうすぐ病気がよくなる」と信じることそのものに大きな治癒力が宿っているのです。

なぜ、人々はもっと真剣に病気を追い払うために心の状態が重要になるという可能性、心に”癒しの力”が宿っている可能性を考えないのでしょうか。

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