社会保障・税「一体改革」は医療・介護の改悪か 強調される「自助」と「互助」

医師

削られる入院病床

政府が進める社会保障・税「一体改革」路線のもとで、医療、介護の再編が行われようとしています。

この再編計画は大きく2つの柱から成り立っていて、1つは2025年を目標とした医療費抑制のための病床数の削減。

日本の75歳以上の人口は2025年には30%を超えます。

厚生労働省も、高齢化のピークとなる2025年の入院病床の必要量は202万床に上ると推計しています。

ところが、財政難を理由に43万床削減して159万床に抑え込む方針です。

必要な入院を制限し、早期退院を推し進めることは在宅、外来において重度の患者があふれ、”入院難民”、”看取り難民”を生み出す事になるでしょう。

早期退院を強めるための数値

さらに、最も看護師の人員配置が手厚い「7:1看護病床(患者7人に対して看護師1人を配置)」は全国に36万床ありますが、これも2025年までに「高度急性期」の機能を持った病床に再編し、半数の18万床へと減らす計画です。

2014年4月からの診療報酬が改定され、「在宅復帰率」や「在宅復帰強化加算」などの早期退院を強めるための数値が導入されました。

病床数の削減はこれから更に強引に進められていくでしょう。

医療費削減

行き場を失う恐れも

もう1つの柱が、病床数の削減によって医療機関を早期退院させられ、介護施設にも入れない患者を「地域包括ケア」の名の下に市町村に医療・介護の提供体制をつくらせ、ぎりぎりまで在宅で生活させよう、というものです。

病院・施設から締め出され、地域・在宅でも受け入れ体制が十分整わないまま、薄い医療と少ない介護給付を「自助と互助」の組み合わせでカバーする、”安上がりな医療・介護体制”をつくろうとしているのです。

2014年通常国会に提出された「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」の地域包括ケアについての条項をよく読むと、結局、厚生労働省は国の公的責任を市町村へと転嫁し、市町村もまた、企業やNPO、ボランティア、住民の「自助と互助」に責任を転嫁していく、という構図が透けて見えてきます。

市町村任せの事業は、ただでさえ過疎化・高齢化が進む地方と大都市部の医療・介護の提供体制の違いを無視したもので、市町村間の格差は避けられず、今後ますます拡がっていくのは確実です。

かかりつけ医の役割

先にも触れましたが、2014年4月に診療報酬の改定が行われました。

厚生労働省は外来患者数を5%削減するという数値目標にむけて「かかりつけ医」の普及と「総合診療専門医」の養成に乗り出しています。

日本は国民皆保険制度の下で保険証と一部負担金があれば「誰でも」「いつでも」「どこでも」希望する医療機関で、医療サービスを受ける事ができます。

これをフリーアクセスといい、WHO(世界保健機関)から「総合点で世界一」と評価されています。

新制度では今までの「フリーアクセス」を緩やかに制限していこう、ということです。

かかりつけ医とは患者の過去の病歴や生活習慣などを承知し、本人や家族の健康相談にも応じる事が出来る、在宅医療にも応じてくれる、などの役割を期待される医師の事で、イギリスやフランス、ドイツ、デンマークなどでは早くから各国の実情に見合ったかかりつけ医の制度が導入されています。

外来の延長線上での在宅医療や退院後の受け皿としての在宅医療など、かかりつけ医の機能をどこまで充実させる事ができるかが問われます。

統合医療専門医

問われる 総合診療専門医の役割

一方の総合診療専門医とは現状の医療が細かく再分化していく中で、総合的な診療能力を持つ医師のことです。

患者さん一人ひとりを診察していく中でこのまま自ら継続して診察していくか、専門医への紹介を行うかの判断をし、地域の住民の健康問題に適切に対応する幅広さと多様性が期待されます。

今後の課題として優れた総合診療専門医の育成はもちろんですが、総合診療専門医に患者の振り分けを担う「ゲートキーパー(門番)」機能が集中することで、フリーアクセスが制限されていく事への心配もあります。

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