ここまで来た!最新花粉症治療法

今や、日本人の4人に1人が発症していると言われる花粉症。杉や檜ブタクサなどの花粉が引き起こしますが、ダニやハウスダストが原因のアレルギー性疾患や牛乳、卵、小麦、ナッツ類などが原因で発症する食物アレルギー。

辛い症状

アレルギーパンデミック

他のも、金属アレルギーや化学薬品や化粧品などに対するアレルギーなど私たちの身の回りにあるほとんどの物がアレルギーの原因物質になりえるわけです。

日本をはじめ、アメリカやヨーロッパ諸国などのいわゆる先進国においてこの傾向は顕著で、年を追うごとに増え続け、2000年の時点ではなんと3人に1人が何らかのアレルギー症状を発症するに至っています。

今後更に、しかも加速度的にこの傾向が増加していくことが危惧されています。

アレルギーパンデミックです。

アレルギーの治療と言えば対症療法がすべてで、”一度なってしまえば治らない”というのが定説でした。

アレルギーを完治させる新しい治療法

しかし近年、様々なアレルギーを完治させる可能性がある新しい治療法が注目を集めています。

何年か前に新聞などでも話題になり、NHKスペシャルでも取り上げられた「花粉症の舌下免疫療法」などもその一つ。

患者にアレルギー症状を引き起こしている”花粉成分”を敢えて体内に取り込むという、少し乱暴とも思えるこのような新しい治療法がスイス、カナダ、デンマークなどで研究されています。新治療

ある臨床試験ではたった3回、花粉成分を注射するだけで症状が完治したという人まで現れました。

日本でも花粉症を根本的に治すお米(花粉成分を入れた米)の研究が進められています。

アレルギー疾患を根本的に治療する道筋が見え始めているのかもしれません。

2015年、アレルギーの分野では最も高い権威を持つと言われるアメリカアレルギー学会が米・ヒューストンで開かれました。

そこで、これもアレルギー研究の重鎮、ロンドン大学のギデオン・ラック博士が、ある画期的な研究成果を発表しました。

「ピーナッツアレルギーの新たな予防法として、とても興味深い結果が得られました。子供たちが非常に早い段階で敢えてピーナッツを食べることによって、ピーナッツアレルギーを予防できることが判明したのです」

これを聞いた他の研究者たちは、大変驚きました。

「アレルギー食品を避けたほうがアレルギーの発症を予防できる」という旧来の常識をそれは全く覆すものだったのです。

アレルギーの臨床医でもあるラック博士は、ある研究資料に着目しました。それはイギリスとイスラエルのピーナッツアレルギーの発症率を比較した調査研究の資料でした。

イスラエルでは幼少期にアレルギー食品を特別に避けさせるという考えがそれほど浸透していません。子供たちは4~5か月の頃からピーナッツを食べ始め、1歳にもなれば8割の子供たちがピーナッツを食べています。

”制御性T細胞”「Tレグ(Regulatory T Cell)」

一方、イギリスではピーナッツアレルギーを予防するという観点からピーナッツを食べさせるのを控える親が多く、1歳時点でそれを食べている子供は2割程度。

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にもかかわらず、子供のピーナッツアレルギー発症率はイギリスのほうが10倍も多いのです。

この謎を解くカギは免疫細胞の一種である、”制御性T細胞”、通称「Tレグ(Regulatory T Cell)」と呼ばれる、つい最近になって知られるようになった免疫細胞にあります。

Tレグはまさに従来の免疫研究の常識を覆すものであり、様々な免疫性疾患に苦しむ人々に希望の光を照らす存在として期待されているのです。

発見者は大阪大学免疫学フロンティア研究センターの坂口志文教授です。

坂口教授がTレグを発見するに至った過程をごく大雑把に言うとこうです。

私たちの身体は免疫細胞といわれる細胞群が、身体の外から侵入してくる異物を排除してくれています。

免疫細胞には指令を出す役割のT細胞や体内をくまなくパトロールする細胞、異物や細菌を攻撃する実働部隊など実に数十種類もの免疫細胞が連携して働いています。

免疫細胞の主役・リンパ球ー記憶を持つ防衛システム

免疫細胞の司令塔であるT細胞がその異物を「身体にとって有害である!」と判断すると総攻撃が始まります。T細胞は急速に分裂して数を増やし、待機場所であるリンパ節を出て、異物の侵入場所へと急行します。

「免疫細胞はどこで攻撃を停止するのか?」

現場に到着すると”サイトカイン”と呼ばれる物質を放出して、他の免疫細胞に攻撃命令を出します。

そこで坂口教授はある疑問に辿り着きました。

「免疫細胞はどこで攻撃を停止するのか?敵が全滅したら誰かが攻撃中止の命令を出さなければ余計な攻撃が続いて身体が傷ついてしまうのではないか?

それにT細胞の攻撃命令は必ず正しいのか?もし、間違った指令で間違った攻撃が始まってしまったら、その誤りを正し、攻撃を止める者もいるはずだ!」

それこそが坂口教授が発見したTレグでした。

それまで誰も想像もしなかった”攻撃を止める”という驚きの機能を持ったTレグという新しい免疫細胞の発見に世界中の研究者は驚きと称賛の声を上げました。この発見は、まさに免疫の常識を変えたのです。

花粉、ピーナッツ、そば、小麦、卵、・・・etc、本来攻撃する必要のない異物まで攻撃してしまう・・・免疫細胞は確かに身体の健康を維持するために大切であり、常に監視と警戒を怠らない優秀な細胞群ですが、その見分け方については案外アバウトなところがあるのです。

Red_White_Blood_cells

wikipedia

まぁ、それも頷ける話ではあります。もし、侵入してきた異物が身体に対して危険な物であった場合、異物の分析にあまりにも時間をかけていたら、取り返しのつかないことになってしまいます。瞬時の判断が要求されるのです。「では、一週間後に検査結果を聞きに来てくださいね」という訳にはいかないのですから。

その誤った攻撃を正すためにブレーキ役のTレグが用意されているのです。

誤った攻撃指令

攻撃を担うT細胞と無駄な攻撃を止めるTレグ、二つの働きによって健康は保たれていたのです。

つまり、こういう事です。免疫細胞にとって、私たちの身体を構成しているもの以外はすべて異物です。害は無くとも誤って攻撃する可能性があります。

例えば、春先。杉の花粉が舞う季節になると私たちが呼吸する度に花粉を吸いこむことになります。この時、風邪をひいていて気道の粘膜が炎症を起こしていたり、皮膚のバリア機能が弱っていたりすると花粉が体内に侵入します。

皮膚からアレルゲンが侵入しアレルギーが発症することを「経皮感作」と言います。

後でまた説明しますが、ここにアレルギー発症のポイントが隠されています。アレルゲンが口から体内に入るか別の経路で入るかによって体の、免疫細胞の反応は全く違ったものになるのです。

喉の粘膜から侵入してきた花粉という異物に免疫細胞たちは大騒ぎになります。マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞が司令塔であるT細胞に捕まえてきた抗原を提示し支持を仰ぎます。

T細胞が誤って攻撃指令を出すと次に花粉が体内に入って来た時に一斉攻撃が出来るようにある準備が始められます。T細胞の指令を受け取ったB細胞という免疫細胞は、IgE抗体というたんぱく質を生産しますが、このIgE抗体は次に体内に花粉が侵入してきた時にセンサーのような働きをし、身体は花粉という異物を体外に放出するために、くしゃみや鼻水、涙目といった花粉症特有の不快な症状となって反応するのです。

細菌との接触が多い環境で育った子供はアレルギーの発症率が低い

では、体内に花粉が入り込んでもアレルギーを発症しない人の免疫はどうなっているのでしょうか?考えられるのはT細胞がそれを”身体に害のない物”と正しく認識している場合。この場合は当然アレルギーは発症しませんし、何の問題もありません。

他の可能性として、T細胞が花粉を攻撃対象として認識してもTレグの働きによってその攻撃が起こらないというケースが考えられます。

実は幼少期に細菌との接触が多い環境で育った子供のほうがそうでない子供に比べてアレルギーの発症率が低い傾向にあるいう、いわゆる衛生仮説もTレグで説明できます。

人の身体は生まれながらにして完成している訳ではありません。

環境からの様々な影響を受け、それに適応するように身体を順応させていくことで成熟させていくのです。

体内への細菌の侵入が頻繁に起こりうる環境では、その度に免疫も活性化し攻撃力の高い免疫システムが作られる一方で、先述の誤って攻撃する可能性も増えます。それを抑えるためによりたくさんのTレグが必要になり、現に作られることでアレルギーの発症も抑えられるという訳です。

少し詳しく言うとTレグのもとになるのは新生児期に作られるナイーブTレグであり、このナイーブTレグから花粉や食品などの異物に個別に対応するTレグが作られるのです。

Tレグの発見は「治らない病」というアレルギーへの定説を覆すかもしれません。

アレルギーは人間の身体にくまなく存在する免疫細胞が暴走し制御不能になって攻撃する必要のない異物を攻撃してしまう病気です。かといって免疫の働きそのものが弱くなればたちまち感染症や癌のリスクに曝されてしまいます。これがこれまでの医学の常識であり限界でしたが、全身の免疫を落とすことなく、暴走している免疫細胞だけを抑え込むという特異な働きをもつTレグ。有望な治療法としての研究は、今後ますます加速していくでしょう。

舌下免疫療法

2014年から保険診療が使えるスギ花粉症用の治療法として大きな話題になりました。

スギ花粉の成分が入った液体を舌の裏側に垂らします。舌の裏側の粘膜にはたくさんの毛細血管が通っているのでそこから花粉成分が吸収されます。

これを花粉が飛び始める3か月以上前から毎日行うことで、花粉シーズンに入ってからの症状がグンと軽減されたり、時には完治してしまう事さえあります。

アレルゲン免疫療法(皮下投与と舌下投与)

他にも国立農業生物資源研究所で研究されている花粉成分入りのお米を毎日食べるというユニークな方法もあります。

”異物”によってアレルギーが発症するかどうかはそれが「いつ」「どこから」入ったかが重要です。

花粉成分入りのお米は当然ながら腸から吸収されていきます。腸は何かを食べるたびにそれぞれの食べ物ごとにTレグが作られる場所です。つまり、この場合は花粉成分が腸から吸収されるたびに花粉への攻撃を止めるTレグが作られるというわけです。

先に述べたギデオン・ラック博士の研究のようにアレルギー食品を食べることは、食物アレルギーの原因になるどころか予防になる可能性が高いのです。

海外でも様々な治療法が研究されています。

花粉成分に細菌のDNAを加えたものを注射してTレグを増やす方法。細菌のDNAは感染症を引き起こす危険なく、3回注射するだけでほとんどの人に症状の改善がみられました。

どうやらアレルギー治療に革命が起こる日もそう遠くはないようです。

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