健康革命∼マイクロバイオーム・人と微生物の共生

近年、予防医学の重要性が高まる中、疾病管理と健康増進に大きく寄与し、のみならず生理学の理解に真の革命を起こそうとしている研究として、ヒト・マイクロバイオームの分野が注目されます。

ヒト・マイクロバイオームとは、人体の内側や外側にいるあらゆる微生物の集合体を指す概念です。

特に腸内に住む細菌や真菌は、人体と環境間で起きる相互作用に影響し、アレルギーや自己免疫疾患の発症や予防にも深く関わっています。

肥満や糖尿病を引き起こすのも防ぐのも、体内の炎症を抑えるのも悪化させるのもこれらの細菌の影響が大きいのです。

胃腸の健康が私たちの健康に重要な役割を担っていることに疑いはありません。

胃腸の健康

「セカンドブレインー腸にも脳がある!(小学館)」の著者、マイケル・D・ガーション医学博士はその著作の中で

神経胃腸病学は、腸に第二の脳がある事を突き止めたときに始まった。腸には「自分勝手に機能できる」神経細胞、つまり、脳や脊髄からの命令を受けずに臓器を動かせる神経細胞が存在することが証明され、その重要な発見がきっかけとなって第二の脳の存在が認識されるようになったのである

と述べています。

一方で、健康が遺伝に大きく左右されることは誰でも知っています。46本の染色体の中に収められた遺伝子がホルモンなどの情報伝達物質、酵素、抗体、その他細胞の活動を行う様々なたんぱく質を作り、生命活動を支えています。

これら遺伝情報のエラーで引き起こされる染色体異常症や多因子性遺伝病。

こうした遺伝病とは違い、ある特定の病気になりやすい体質が遺伝するケースもあります。生活習慣病と言われる糖尿病、がん、高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害・・・etc。これらは病気そのものが遺伝するわけではなく、病気になりやすい体質が遺伝するわけです。

第二のゲノム

しかし、これらの疾患も食事に気を配り、適度な運動を心がけ、ストレスと上手く付き合う術を覚えれば、かなりコントロール出来る筈です。問題は「そのためにどうするか?」です。

トータルで健康を維持する鍵が、生物のもつ全ての核酸上の遺伝情報ゲノム(Genom)に依存することは確かです。

加えて、健康全般に影響し、本当の意味での体質改善に寄与するのが第二のゲノムともいうべきマイクロバイオーム(微生物相)、特に私達の腸内を棲家とする腸内細菌なのです。これらの微生物が持つDNA(デオキシリボ核酸)総量は人のそれを軽く凌ぎます。

そして、マイクロバイオーム(微生物相)は生活習慣の選択によって大きく変える事が可能です。

腸内マイクロバイオームは人間の食生活の変化に驚くほど速く順応します。腸内の細菌は短時間で2分裂し、30~40分ごとに倍に増えます。その人が頻繁に口にする食物を食べて生きる菌種は比較的早く増え、普段あまり口にしないような食物を食べる菌種は腸内で少数派へ押しやられます。

腸内細菌

端に追いやられた少数派の菌種は腸の粘膜を食べて生きることを強いられます。すると、腸の内壁はどんどん薄くなっていき、微生物を安全な距離に遠ざけていた保護膜が破損します。このようなことが毎日繰り返されることで免疫系が危険を察知し、大腸に炎症が起きるのです。

微生物を粘膜から遠ざけておかなくてはなりません。

マイクロバイオームの多様性

日本はジャンクフードや食品添加物だらけの国になってしまいました。そこに生きる私たちも、このきわめて有害な生き方を強いられます。過剰に加工された食事、抗生物質の乱用、抗菌剤を多用した家屋によって腸内細菌の安全も脅かされます。

現代人の腸内には祖先の半分ほどの細菌しか棲んでいないかもしれません。自己免疫疾患、肥満、糖尿病など欧米式の生活習慣が健康に及ぼす悪影響は、ゆっくりとですが確実に出始めています。

より多様なマイクロバイオームをもつ社会ではこうした疾病があまり見られないことからも明らかです。

現代人、特に欧米型の食生活(過度に甘く、高カロリーで食物繊維をほとんど含まず、高度に加工されたうえ、消費期限を延ばす目的で殺菌処理された食品群!)を営む国々において、炎症性腸疾患(IBD)の罹患率が高いことを考え合わせると腸内で幅を利かせている菌種は質の悪いグループなのでしょう。

先程も触れましたが、人のマイクロバイオームに含まれる各種の細菌は固有の遺伝子コード、すなわちゲノムを持っています。

ヒトゲノムは変えられませんが、生まれ持ったゲノムをマイクロバイオームによって調整することならできます。もちろん、目の色や鼻の形は変えられませんが体重や免疫系など人体の多くの側面がこれら腸内の微生物の影響を受けます。

進化に成功したすべての生物は細菌との相互作用の道を選びました。体内に棲まわせる見返りに仕事をしてもらう事にしたのです。実際問題、免疫系がいっときも休まずに働き続けても、消化管の微生物を完全に排除するのは不可能に近く、例え出来たとしても大変な労力で、他の仕事に手が回らなくなります。

人は腸内細菌とのポジティブな共生を選択しました。これらの細菌叢が人体にもたらす一番わかりやすい利益は、細菌が腸内で発酵し産生する化合物です。この化学反応のおかげで私たちは食べ物からカロリー(熱量)を得ます。カロリーは細菌がいなければ無駄になってしまうのです。

高カロリーの食べ物が少ない私たちの祖先にとってこの事はとても重要な問題でした。

そして、過剰なカロリー摂取が問題になりつつある現代人にもこの化合物は大切な仕事をこなしています。免疫系を調整し病原菌を寄せ付けず、代謝を統括しているのです。

では、どうするか

良心的な健康法は必ず”食”の重要性に言及しています。マイクロバイオームの問題も例外ではありません。マイクロバイオームの多様性を高め、細菌が発酵によってつくる短鎖脂肪酸を増やすことが重要です。

幸いにもマイクロバイオームは食事の変化に速やかに反応します。腸内に多様なマイクロバイオームを持つ人は細菌種の少ない人に比べて健康で現代人が罹りやすい病を遠ざけてくれるでしょう。

食養生

炭水化物は低GI食品から

炭水化物は、糖質(でんぷんや糖類・甘味料・アルコールなど)と食物繊維に分類されます。

食物繊維を多く含む低GI食品(果物、野菜、穀物)を多く摂りましょう

サツマイモ、タマネギ、玄米、はるさめ、そば、大豆食品、ブロッコリー、葉野菜

飽和脂肪酸の摂取を減らす

動物性の飽和脂肪酸を多く含む食事はマイクロバイオームの多様性にとって良くありません。脂肪の多い食事を好む細菌は病原性細菌、つまり腸内に炎症を起こさせるもとになります。

「汝の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ」医食同源の教え

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